イギリスのEU離脱について今日は考察したいと考えています。
私が開票前後より、離脱派が優勢であることを見抜き、ツイートしていた等という話はしません。

EUの問題とイギリスの離脱の関係について書きたいと思う。

まずEUの問題について。
EUの基本知識等はご自身で調べていただければと思います。
EUをイギリスが離脱しましたが、それは、EUの問題に起因します。


EUにはいくつかの問題がありますが、以下の3つが、イギリスがEUから離脱するきっかけとなっているEUの問題点でしょう。

1民主主義の負債(民主主義が機能せず、EUのエリート官僚の支配)
2国益、ナショナリズム、ポピュリズム
3外国人嫌悪(ゼノフォビア)、外国人排斥


1まず、民主主義の負債があげられます。
民主主義の負債とは・・・
民主主義が機能しないことですが、民主主義の原則は何でしょう。
近代民主主義の理念は、「治者と被治者の同一、成員の同質化・平等化」です。
この原則が破られたことが大きな原因の一つと言えます。
EUは地域統合を目的としていますが、その反面、民主主義は地域統合が進むほど犠牲にされてしまいます。
EUにおいては、国家主権が制限されます。そして、国家主権は、より上のEUとより下の地域(地方)に奪われていきます。
さて、EUにより、利益を得ている社会の上位層と民主主義の負債によって自国のことを自国で決められないことで不利益を被る社会の下位層との分断があります。

ここで、人の移動が自由化され、グローバル化したこともあり、中産層が分裂し、下位層に移動せざるをなかった人々は当然、自己の雇用が奪われたと認識するわけですから、民主主義(この場合は選挙等)が正常に機能すれば、下位層の見解が受け入れられることになるわけです。

しかしながら、国家主権が制限されており、人の移動を制限する等はできないわけです。

ここで、社会の分断が生じ、拡大するメカニズムであるといえます。

イギリスではこの分断が大きくなっていったことが深刻であったといえます。


2EUでは、地域を統合するわけですから国益と相反することがでてきます。これをうまく自国に有利なものにしようとしても、譲歩せざるを得ません。
国益と地域統合の衝突が生じるのは当然といえます。

そこで、自国の国益が無視されることで、ナショナリズム(ここでは排外的な悪いナショナリズムを指す)が高揚することになります。

1でも説明したように社会の分断がおきており、社会に不満をもつ層でとりわけナショナリズムが広がり、3でも述べるように外国人の排斥がおきます。

社会で不満を持つ層はポピュリズムや所謂極右に向かいます。

今回の離脱も経済的に多大な損失を出すにも関わらず、離脱派が優勢であったということの大きな要因にポピュリズムがあるといえ、大衆に迎合する政治家が離脱を煽ったといえるでしょう。

最後にナショナリズムの一つの定義をあげておきます。
「ナショナリズムとは、政治的な単位と民族的な単位とが一致しなければならないと主張する一つの政治的原理」(アーネスト・ゲルナー)


3はゼノフォビア(外国人嫌悪)、外国人排斥です。
1.2の帰結として、社会に不満を持つ層は自身の雇用が奪われたり、治安が悪化したりしたと認識し、そして、人の移動も制限できないのであれば、外国人が全て悪いので排斥してしまおうと考えることになります。
これは不可能なことです。しかしながら、これを実現したいと考える層が大きなリ、EUを離脱しようということになったといえます。

では、他の国ではなぜ起きなかったのかという説明が弱いですが、イギリスではそもそも上流階級と労働者階級は言語さえ異なるほど社会的な亀裂が深い国です。
これからはイギリスだけに言えることではなく、より多くの国に広がり、
国民投票にかけられる国は増え、離脱する国がないとも言い切れない状況になっていくと言えます。
EUの解体が現実味を帯びてきます。

イギリスは事例の一つではありますが、これはEUの統合の結果の弊害ともいえ、他の国々にも波及するため、EUは少し前の段階に戻すことにより、国家主権を認める方向でなんとかEUの崩壊を免れる方向にいくということが一番ありうるシナリオです。




参考文献
羽場久美子『
ヨーロッパの分断と統合拡大EUのナショナリズムと境界線―包摂か排除か 』、中央公論新社、2016